どくそせん

間違いなく、今年の萌え系軍事本ベスト1候補筆頭です。

文章は架空戦記を書ける作家としては若手筆頭の内田弘樹氏が担当し、イラスト唯一にして、絶対の萌え系ミリタリー雑誌[MCあくしず]でもイラストを描いているEXCEL氏というイカロス出版最終兵器コンビが作った本と言えば、当然とも言えます。

もし、この二人が作成した萌え系軍事本が最高峰の本でないとしたら、何を最高峰と呼んで良いのかさっぱり分らなくなります。

目次
迷ったらココ!どくそせん用語集
第一部 独ソ戦前史
第二部 1941年運命の開戦、バルバロッサ作戦始動!
第三部 1942年スターリングラード!ドイツ軍、油田への長征
第四部 1943年激突、クルクス大戦車戦!東部戦線のターニングポイント
第五部 1944年赤い鋼鉄の奔流 ドイツ軍、決死の後退戦!
第六部 1945年ドイツ本土最終戦!東部戦線最後の五ヶ月間
episode13 ハルベ脱出戦
おわりに

著者の内田氏が日本には独ソ線をはじめから終わりまでまとめた本がないと言う思いから作成された本ということで、独ソ戦の発端となるバルバロッサ作戦からベルリン攻防戦まで網羅されています。
ある程度独ソ戦に興味をもって、人生を過ごしてきた人だと、内容に関して不足していることもあるでしょうが、独ソ戦をあまり知らないミリタリーオタク初心者には、十分すぎる内容でしょう。300ページ弱によくここまで詰め込んだものだと関心させられます。また、ネズミに電気系を食われて戦車が動けない話など、初心者に疲れを覚えさせない余談が至る所に含まれています。私もミリタリー系に詳しい人間で無いので、この本で独ソ戦について、知らないことが多くあることを教えて貰いました。この本を読むだけで、独ソ戦について知ったかぶりができるに違いありません。(世間で生きていく中で独ソ戦について語る機会があるかと聞いてはいけません。)

地名・人名の覚えにくさ、距離感の理解が難しいことなど、世界史の本を読むときに出てくる通例の問題は残りますが、この手の本では、宿命ですし、欠点を補って余りある無いようです。この本を元に独ソ戦に興味を持って、個々の事例について詳しく調べだしたときに年表の代わりとして、十分使用することができます。

文章は良いとして、イラストは毀誉褒貶入り乱れます。
大半がパロディと下ネタでできます。パロディと下ネタ以外のところはよくできているのですが、非常に少ないです。個人的には201ページや205ページのネタは大好きですが、同人ネタやインターネット上ではやったネタなどがいくつかあり、そちらの関係に対して興味が薄い方には、少しハードルが高いかもしれません。(と書きつつも、イラストの主人公が小林源文氏の劇画のパロディなので、パロディが云々と語るのも野暮な気もします。)
そして、何よりもイラストを見ただけだとパロディが多すぎて独ソ戦が理解できません(笑)。Excelさんには是非、絵がメインの[どくそせん]を作って頂きたいです。

それと本書を読み終わった後、EXCELさんのHP(http://zuya.jp/usr/excel/)を読んでみて下さい。生みの苦しみと言うものを少し理解することができます。

というわけで、掛け値なしでお奨めの本なのですが、この点に関して、本能的に毛嫌いする人もいるかと思います。そんな人は、おわりに、から読むことをお奨めします。(本書を立ち読みする勇気がある人にも、おわりに、から読むことをお奨めします。)
おわりには、内田氏やEXCEL氏、この本に関わった人たちの歴史に関する立ち位置が理解できる良文だと思います。

どくそせん

どくそせん