スーパーコンピュータを20万円で創る。

まさしく、プロジェクトXでした。

スーパーコンピュータという言葉は大変耳心地がよく、何でもできる優秀なコンピュータのようなイメージが世間にはありますが、実際にはただ早いだけのコンピュータです。そして、早くするための方法としてWindowsのように汎用性を持たせるのではなく、地球シミュレータのように特化したものになります。

この本は、GRAPEという天文専門のスーパーコンピュータを作り上げたメンバーの一人が書いた物語です。

最近は理系に進む学生が少ないのですが、さらにコンピュータ系に進む学生が少ない事が問題となっています。昨年のWEB+DBのイベントで、id:naoyaさんは知り合いの教授から聞いた話として、コンピュータ系は他の工学系と異なり、モノが見えないから、魅力がないのではないかという話をしていました。そして、今回紹介している本を例えにだして、このような物語が世間に広がればもっと人材が集まるのではないかという話をされていました。

今回、本を読んだ感想としては、まさしくid:naoyaさんが言うとおり、この本を読む高校生や中学生が増えれば、コンピュータ系に進む人材が増えるに違いありません。

天文学を学びたくて天文学の教室に進んだ伊藤に教授はこういいます。

コンピュータを作ってみないか。

当時の理論天文学はすでに手計算でできる計算量を越えたレベルとなっており、コンピュータによる計算機が必須でした。しかし、当時のコンピュータは非力でとても期待しているだけの計算ができるだけの能力はありませんでした。
世間に出回っているコンピュータが非力ならば、自分たちで十分な能力のある計算機を作ってしまおうというのが教授の発想でした。そて配属直後の状況ですから、逆らえなかった伊藤はコンピュータをまったく知らないままコンピュータ製作を始めます。

助手との軋轢、同じ研究室の仲間との共同作業を経て、天文専門のスーパーコンピュータGRAPEはできます。

このできるまでの物語が特に熱いです。詳しくは本を読んで見てください。
作者は漫画の原作者でもあるので、文章が平易である、文庫本一冊を一気に読めます。一方、行間を読むと結構いろいろな事を省略している気もします。できれば、三刊くらいにわけて、完全版を出してほしいです。

スーパーコンピューターを20万円で創る (集英社新書)

スーパーコンピューターを20万円で創る (集英社新書)