最強のコーチング

早稲田大学を最強のラグビーチームに仕立てあげた清宮克幸氏のコーチング本。とにかく熱い。そして、学生スポーツというチームをまとめていく形で理想的な状態から始まるマネジメントが以下に楽かを語っています。

はじめに-普遍のコーチング哲学
第一章 コーチングの出発点は「なぜ」
第二章 「場」の活用法
第三章 目的の明確化
第四章 セオリーと個性のバランス
第五章 コンバートの重要性
第六章 モチベーションの高め方
第七章 目標の数値化
第八章 キャンプテンシーの活かし方
第九章 朝令暮改のすすめ
第十章 優先順位と次へのステップ

著者は、サラリーマン経験で培った巧みな方法と元来持っていたリーダシップで早稲田大学ラグビーチームを一年足らずで最強のチームへと引き上げます。そのなかでやったことが連綿と書いてあります。読みやすい文章の上にスポーツについて書いてある本なので、読んでいるほうも自然と熱くなります。ラグビーのルールを知らない私でもスラスラと読めてしましました。

しかし、サラリーマンで多少でもマネジメントの経験がある人なら、この本を読んだあとに妙な違和感を感じると思います。私は感じました。
著者が行おうとしていることが、上手く行き過ぎなのです。もちろん、失敗例もありますが、その失敗に対する学生の反抗が十分に予想できる範囲なのです。

この違和感については、著者自らが書いています。

第一章 コーチングの出発点は「なぜ」より
私は、サントリー社内の中間管理職を対象にした、チーム・リーダーを育ているための「リーダ研修」に出席したことがある。
(中略)
そして、じつはその研修で、私はお話にならないほとひどい点数を付けられたのだ。
(中略)
研修でのリーダー像は「グループや組織のメンバーの顔色をうかがって共に創っていこう」という「共創」の考え方がベースにあったようだ。しかし、経験からいわせてもらえば、まったく逆だと思う。メンバー全員を自分の意見になびかせることができなくて、リーダーなど務まるはずがないのある。

かなりのリーダシップの持ち主でないとこんな事言えません。著者は自分の意見を通すスペシャリストであり、自分の意見を通す環境を作るスペシャリストなのです。凡人には真似ができません。

そして、何よりも大事なことはスポーツ界、特に勝つことを目的とした集団だからこそ、著者のようなマネージメントが可能だと思います。

以前、産経新聞に載っていた元Jリーガーで現在は実家の料亭を継いでいる松山吉之さんの言葉がスポーツ界と実際の会社との違いを物語っています。(元ネタの新聞記事が見つかりませんでしたので、リンクはありません)

サッカーでは、チームの勝利や技術の上達など目標がわかりやすかったが、店ではさまざまな年齢構成の上、バイトや社員の目標もそれぞれ。まとめる難しさも実感している。「ただ、いい店にしたい。みんなそれだけは共通しています」

世間の会社では社員一人一人の目標が違う。そして何よりも「働くこと」に対する目的が違います。松山氏の料亭では「いい店にしたい」と目的が共通のようでしょうが、人数が多数の大企業では目標が同じというのは非常に稀有な場合でしょう。

同じ目的の中のマネージメント(コーチング)としては、まさしく最強の本です。参考なります。しかし、多様な目的をまとめる人には、目的をまとめた後に役立つことが書いてある本です。